群集心理 (ギュスターヴ)
著 : ギュスターヴ・ル・ボン
訳 : 櫻井成夫
from: TOPPOINT 2022 年 8 月号
群集心理の特徴とその功罪を分析した古典的名著
近代の最高主権者は群集
群集の心理を知ることは重要
ある状況において、人間の集団は、各自の感情や観念が同一方向に向いた集団精神を備える
心理的群衆とでもいうべきこの集団では、個人の感じ方や考え方、行動の仕方が孤立していた時とは全く異なる
群集に特有な性質が出現する原因
1. 群衆中の個人は、大勢の中にいるだけで不可抗的な力を感じ、本能のままに動く
2. 精神的感染 : 群衆においては、感情や行為が感染しやすい
3. 被暗示性 : 群衆中の個人は、自分の行為を意識せず、ある暗示を受けると何らかの行為を遂行しようとする
催眠術師の掌中にある被術者の幻惑状態のよう (脳の作用がマヒさせられ、無意識的活動の奴隷になって催眠術師に操られる)
群集の特徴や行動
衝動的で、動揺しやすく、昂奮しやすい
無意識に支配される
暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じる
感情が誇張的で、単純
犯罪を行いかねない一方で、単独の個人よりもはるかに高度な無私無欲な行為も行いうる
群集の想像力は刺激されやすい
群集は心象 (イマージュ) によらなければ物事を考えられず、心を動かされない
このような民衆の想像力の上に、征服者の権勢や国家の力が築かれている
仏教、キリスト教、回教などの創始や、宗教改革、フランス大革命、社会主義の侵入のような歴史上の大事件は、群集の想像力の上に及ぼされた強烈な印象の、直接あるいは間接の結果
民衆の想像力が権力の支柱
群集の想像力を動かすのは、事実そのものではなくて事実の現れ方
言葉によって群集に働きかけるには、その時期の群集にとってその言葉がどんな意味を持つのかを知る必要
言葉は生きている
同じ社会でも、同じ言葉が様々な社会層にとってそれぞれ異なる意味を持ちうる
さらには種族性も
例えば 「民主主義」 という言葉
ラテン人にとって、民主主義という言葉は、国家の意志や創意の前に、個人の意志や創意が消滅することを意味する
アングロ・サクソン人 (特にアメリカ) にとっては、個人意志の強烈な伸展と国家の消滅を意味する
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